もし自分の親が認知症になってしまったら…
まず頭に浮かぶのは介護のことでしょうか。ですが、認知症はその人の記憶や今までの生活だけでなく、別の自由も取り上げてしまうのです。
たとえばあなたが認知症と判断されたら、自宅は簡単には売却できません。自宅を資金に何とか介護施設の費用を捻出するはずだったご家族が、金銭面でも大変苦労してしまうケースがあります。また持ち家は相続対策として、もしもの時に備えて準備をしておかないと、家族にとって精神的にも経済的にも、より大きな問題が生じることになるかもしれません。ここでは認知症と不動産に関わる大切な内容をお伝えします。
- 認知症になってからでは遅い 実家の売却
- 認知症 実家売却のタイミングを逃してしまうと
- 成年後見人と成年後見人監督制度
- .後見監督人が任命されてしまうと
- リバースモーゲージとは リースバックとの違い
- まとめ
1.認知症になってからでは遅い 実家の売却
認知症の親名義の実家は売れない?
ご実家を相続するよりも、売って認知症の親の介護費用に充てたい、もっとグレードの高い老人ホームに入居させてあげたい。そんなことを思う方は少なくないと思います。ところが意外にもこれを認めてもらえないケースが多いようです。
2.認知症 実家売却のタイミングを逃してしまうと
ご相談者にいらした娘さんは、目黒区で飲食店を営んでいらっしゃいました。そして60歳を過ぎ、体力的な面からお店を閉めることにしました。
東京都三鷹市にある、ご実家にはお母様が一人暮らしをしていましたが、80歳代後半になり、病院に入ったり、ホームに入ったりを繰り返すようになりました。
お母様も空き家同然のご自宅が気がかりなご様子で、おふたりで売却についての話もしていたそうです。そんな矢先、お母様が認知症を患ってしまい、家の売却自体が困難な状況になってしまったのです。
お母様は年金生活で、ほとんどお金はありませんでしたし、娘さんも既にお店を閉めてしまったので、以前のような収入はありません。
ご実家を売却して、お母様の介護費用を捻出する目的で「マイホームだけは守らナイト」にリースバックを含めてご実家の売却のご相談にいらしたのですが。
3.成年後見人と成年後見人監督制度
相談を受けたものの、事は簡単には進みませんでした。
認知症が進むと本人の意思決定が困難になります。そのため、まずは提携の「NPO法人えがおで相続を」で、家庭裁判所に後見申立手続きを行い、相談者の娘さんが後見人になるということから進めておりました。
ところが家庭裁判所からの指示で、専任の後見監督人として、三鷹市内に事務所を構える司法書士が任命されることになってしまいました。
本来、後見人は成人であっても判断能力が十分でない人、例えば認知症、知的障害、精神障害がある人を詐欺などの被害から守り、保護する「成年後見制度」というものです。
ところが、なんと9割の横領事件は、後見人となった親族の仕業なのだそうです。
こんな理由から成年後見人が怠慢でないか、不正をしていないかを監督する「成年後見人監督制度」が適用されてしまったのでしょう。
4.後見監督人が任命されてしまうと
では、後見監督人が任命されてしまうと、どうなるのでしょう。
この後見監督人は、いつでも、娘さんに対してお母様の財産目録を要求したり、後見の事務について調査したりすることができます。
だからこそ認知症の方の権利も保全できるのですが、
やましいことなど一切なくても後見監督人の監視下で物事を進めなければなりません。
数か月ごとの収支状況の報告や、その監督人に対する報酬の支払い義務もあり、何かと大変な状況に陥ってしまったのです。
結局、実家の売却の話は進まず、そうなるとホームの入居費用は全て娘さんが負担せざるを得なくなり、当初の予定とはだいぶ違った結果となってしまいました。
もう少し早いタイミング(お母様が認知症になる前)で行動しておけば、スムーズに売却できたはずですし、彼女の生活も大きく変わっていたことでしょう。
認知症の親名義の実家の売却 どうすればよかったのでしょうか。
彼女のように、認知症になってしまった親名義の実家を売却ができず、困ってしまうケースは少なくありません。
何より重要なのは、親が認知症になる前にいろいろな予防策をとっておくことです。
とは言うものの、このような話を持ち出すタイミングはなかなか難しいという方も多いものですが、お父様やお母様自身を守る為でもあるので、しっかりとお話しになってください。
このようなお話をいたしますと、元気なうちに何を決めておいたらよいのかよくわからない、というご質問を受けることがあります。
「認知症になる前に親としてやるべきこと」を以下にまとめてみました。
●判断能力があるうちに、あらかじめお子様と「財産管理契約」を結んでおく
この時、ご自身が認知症などで、判断能力を失った時、財産をどうしたいとか、どう生活をしたいか、なども定めておく。
※例えば、不動産の売却を娘に一任する旨の委任状があったとしても、認知症になってしまったら無効とされてしまうそうです。
●重要な資産の移動
不動産などの名義変更
生前贈与や生前の売却
●リバースモーゲージやリースバックの契約をする
物件によってはリバースモーゲージを利用することもできますが、条件に制限が多いなどの理由から、リースバックの方が現実的かと思われます。
手遅れにならないうちに!!
上記の準備は、一部ですが、早めに手を打っておけば、選択肢はいくつかあるものです。
ただし、重要なのは「判断能力があるうちに行うこと」という点です。
5.リバースモーゲージとは リースバックとの違い
リバースモーゲージとは、金融機関との契約で持ち家を担保にセカンドライフを充実させるという趣旨の高齢者専用のローンです。
利用する目的として、例えば入院費や高額医療費、有料老人ホームへの入居費用といった万が一の備えにすることができます。
また、限度額内の借入はいつでも自由なので旅行などに利用することも可能といったものです。
自宅に住みながら、権利だけ売却するという点では、リースバックとは同じです。リースバックとリバースモーゲージの大きな違いは、リバースモーゲージの場合、月々の支払は不要となり、契約者が亡くなられた時、自宅の売却によって一括返済となる仕組みです。
ただし、当初の契約期間より長生きしているにもかかわらず、延長できない場合や、使い道に制限がある点など注意も必要です
まとめ
あなたがあと5歳年を重ねたとき、ご両親はおいくつになられますか?
まだ、そんなことは考えたくないとお思いでしょうが、そろそろご両親が認知症になってしまった場合の準備を、ご本人と一緒にしておくことをおすすめします。
この先、年を重ねるにつれ、ご両親のさまざまな問題が発生してくることでしょう。
うちはまだ大丈夫なんて言ってはいられません。
ご両親の為というよりは、あなたのその後の生活の為に、親の認知症を考えた早めの防衛策の構築が必要となってくるでしょう。
一度、ご両親と話をしてみてはいかがでしょうか。