リースバックとは、売却した自宅に、賃貸でそのまま住み続けることができる不動産売却の方法です。売却の事情は様々ですが、売却しなければならないけれど、本当はお気に入りのこの家から引越したくない、という方が多くいらっしゃいます。たとえば、表の通りからレンガを敷き詰めたこだわりの私道を抜けると自宅の門が見えるお宅、素敵ですね。このような私道を設けるには少し特別な形の土地でなければ、なかなか難しいものです。この形の土地を「旗竿地」と言います。
そこで今回は不動産に関連する言葉の中から特徴的な土地の一つである「旗竿地」というものを取り上げてみました。この旗竿地は、実は意外と目にする機会が多い土地です。私も先日、通勤で駅に向う途中の道で古家の解体の為、小さいブルドーザーがトラックから降ろされるところを見かけました。その現場はまさに「旗竿地」でした。その土地をそのまま売るのか、新築の建物を建設するのかはわかりませんが、この記事を読んでくださっている方の中には、旗竿地に建てたマイホームのリースバックを検討中の方や、相続した旗竿地の実家を売りたい方、新居として購入を検討中という方もいらっしゃるのではないかと思います。
「旗竿地」は特徴的がゆえ、注意すべきポイントも少なくありません。今回はこの「旗竿地」の良い面、悪い面も含めてご紹介させて頂きます。
ところで「旗竿地」とはどのようなものかご存知ですか?
- 旗竿地とは どのような土地なのでしょうか?
- 旗竿地 なぜできる?
- 旗竿地の注意点
- 旗竿地は選ぶべきなのでしょうか?
- 旗竿地の建蔽率と容積率は?通路部分はどうなるのでしょうか?
- 旗竿地のような奥まった敷地を選ぶべき?
- 旗竿地 メリット
- まとめ
1.旗竿地とは どのような土地なのでしょうか?
「旗竿地」とは土地の形を示した言葉です。字のごとく「竿」の先端に「旗」が付いているような形の土地の事です。
不動産用語では「敷地延長」、「路地状敷地」とも呼ばれ、敷地の一部が細長く通路状になっており、そこを通って宅地と前面の道路を行き来するような形状です。
← 図で描くと、このような形です。
このように細長い通路部分も含めて敷地となります。
整形地より複雑となるこの形、そして道路から奥まった敷地となる旗竿地は、一般的には整形地より割安となりますが、同時に注意点もあるので、購入を検討中の方はご自分の生活が旗竿地に合っているのか見極める必要があります。
2.旗竿地 なぜできる?
では、なぜこのような特殊な形の土地があるのでしょう。
たとえば、
あなたが実家を相続したとします。計測してみると120坪もの広さがありました。建物は経年でだいぶ劣化しているので思い切って取壊して建て直すことにしました。
ところがこの広い土地に新たに1軒家を建築する程の費用も、家族も少ないので、分筆して売却することにしました。
土地を3分割にすることにしたのですが…
単純に3分割するとこんなに細長い土地になってしまいます。
これでは、まるでウナギの寝床…住み心地も見栄えも期待できません。せっかくの一軒家をここに建築するのも考えものです。
そこで手前に整形地、その後ろ側に2つ土地を設けてみました。そうなると、この後ろ側の土地に出入りする為の通路を作る必要があります。こうして敷地を延長させた通路に当たる部分が奥側の「旗」の部分の土地の通路となり、このような形の土地ができます。
3.旗竿地の注意点
3-1.旗竿地の通路部分
この「旗竿地」の「竿」のような通路の部分に建物は建てられません。建物の敷地は建築基準法に定められた「接道義務」があり、幅員4メートル以上の道路に2メートル以上接していなければなりません。
車を駐車する場合はこの部分を利用することになります。もし車を2台お持ちの場合、縦列に駐車するしかありません。奥側に停めた車を使用したくても、まずは前面の車を動かす→奥側の車を出す→前面の車を元に戻す という動作が必要な時もあります。
そして、通路幅2メートル以上という接道義務を満たしているとは言え、2メートル幅に駐車できるのはせいぜい軽自動車です。その横を人が通行するには少し狭いかもしれませんし、自転車やバイクを奥側に停める場合も通路の幅が問題になってきます。それからもう一つ重要な点は、そのような狭い場所に駐車できるような運転技術があるかということです。
旗竿地の通路の幅を変えることはできません。この通路幅で生活に支障がないのか、しっかり考えるべきです。
3-2.旗竿地が整形地よりお金がかかる場合
一般的に整形地より安く購入できる旗竿地ですが、建築費用が高額になるケースもあるのです。
そうならないために旗竿地を購入する前に建築会社に確認しておきましょう。
●通路の幅が狭いと100万円単位で費用が跳ね上がってしまう
通路が狭いと重機を敷地に入れられない場合があります。こうなると資材の運び込み、建築の作業全般を人力に頼らざるを得ない部分が出てきてしまいます。そのため、通常の建築費用より高額になってしまうことがあります。通路幅は、最低2.5メートルは欲しいところです。
●通路が長ければ長いほど費用は高額に…
水道管などのインフラが家の近くまで通っていれば問題はありません。ですが、前面道路側に水道メーターがある場合は家を建てる部分まで配管を通す必要があります。そのため距離が長い分、費用が高くなってしまいます。
これと同様に、旗竿地への電気の引き込みも、通路の距離が長い、電線が隣家に被ってしまう等の場合、敷地内に電柱を建てる必要があります。
3-3.旗竿地に住む人、旗竿地の隣に住む人
旗竿地の特徴は竿にあたる通路を通って出入りすることです。
この通路は、近距離で手前の家の前を横切ることになるわけです。そうなると旗竿地に住む人、旗竿地の隣に住む人同士、お互いにプライバシーを守る工夫が必要となるでしょう。
例えば、休日にリビングの窓越しでくつろいでいたら、旗竿地の通路を通り帰宅した奥の家の住人と目が合ってしまい、お互い気まずい思いをしてしまったなど。
覗くつもりなど無いのに…
誰しも、気配を感じる方向につい目が向いてしまうものです。だからと言って、自宅に居ながら常に緊張感を持って過ごすのもストレスです。しょうがないことなのですが、できれば見られたくないし、見たくないものですよね。
解決策としては、お互いの敷地の境界に目隠しを施すことです。ですがこの工事も度合によって費用が変わってきます。完全な目隠しを施すには相当な費用がかかってしまうでしょう。これでは旗竿地を安く購入しても本末転倒です。
住んで気づくデメリットは旗竿地に限っての事ではないかもしれませんが、特に旗竿地に家を建てる時、そして旗竿地の隣地に家を建てる時は通路部分のプライバシー対策も頭に入れた家づくりをお考えになった方がよいでしょう。
4.旗竿地は選ぶべきなのでしょうか?
ところで旗竿地は選ぶべきなのでしょうか?結局のところ旗竿地はどんな土地なのでしょうか?
確かに注意する点はいくつかありますが、旗竿地の価格は相場より安いというのは何よりの魅力です。
住みたい地域の整形地は高くて手が出ない場合でも旗竿地を探せば、手の届く範囲になる可能性は高くなります。
それから通路部分もあなたの生活状況によって、条件も変わってくるでしょう。
たとえば、通路の幅は普通車を駐車する場合、3メートル以上欲しいところですが、軽自動車なら2.5メートルでも何とかなりそうです。車自体の必要が無ければ接道義務を満たす2メートル以上あればよいわけです。
また、旗竿地は四方、家に囲まれている環境も多いので、そのような土地が陽当りや風通しが悪いケースもあります。ですが2階をリビングにするなども一つの方法です。ただし、お年寄りと同居される場合、将来的にあなたがお年を召した時、どうなのか、よく考える必要があります。
敷地の面積が広い旗竿地であればこのような心配も無く、庭を作ることも、1階の風通しの良い明るいリビングも可能ですけれど。
5.旗竿地の建蔽率と容積率は?通路部分はどうなるのでしょうか?
旗竿地は前述のとおり、特殊な形をしています。通路の部分は計算に入れるべきか迷われる方も多いかと思います。旗竿地は通路部分も敷地面積となりますので、家を建てられない通路部分も含めて建ぺい率と容積率を計算します。
ただ、ここでも注意が必要です。
通路部分が私道として認定されていても算入できない等のケースもあります。また、旗竿地が、家が密集した地区にある場合などは、その環境によっては※斜線制限を受ける場合も多いので自治体に確認されることをおすすめします。
※斜線制限とは、その敷地の隣地、周囲にある道路や水路、公園、河川などから生じる架空の斜めの線による制限のことです。建物を設計する際に、建物の高さがこの斜線を超えないように計画をしなければならないというものです。
時折、道路に面した側の上方を三角柱状にカットされているマンションやオフィスビル等を見かけますが、それは斜線制限内でなるべく高さや容積を確保するためのデザインであることがほとんどです。
6.旗竿地のような奥まった敷地を選ぶべき?
あなたが一軒家を持つなら通路からダイレクトに外観が見える家がよいですか?それとも専用の通路を通り、奥に玄関が少し見えるくらいの家がよいですか?
もしも前者のような一軒家がご希望でしたら旗竿地を選ぶより整形地がよいでしょう。
それに比べると旗竿地のような奥まった敷地はどちらかと言えば外観より内装に予算をかけたい人に向いているかもしれません。最近は外観をシンプルにその代わり内装にこだわるという人も多いようです。ですが、せっかくの専用の通路です。外構にこだわってみるのもおすすめです。
7.旗竿地 メリット
何かと注意点が多く、面倒な土地だと思う方もいらっしゃるかと思いますが、最後に旗竿地を選ぶメリットをお伝えしておきます。
- 旗竿地を探せば、人気の高い地域でも比較的安い価格で購入できる。
- 旗竿地は、例えば人気のある賑わった地域であっても一歩奥まった静かな空間を得られる可能性がある。
- 道路に面していないため、外観の見栄えより内装に重点を置くことができる。
- 玄関の目の前が道路ではないため、特にお子様やペットがいらっしゃる場合、安心。
- 専用通路があるため、整形地にはない趣を出せる。
まとめ
各家庭それぞれ、事情は違いますが、あなたがこれから暮らしていくマイホームを選ぶ時、何を優先させるかにもよりますが、旗竿地にせよ、リースバックにせよ、そのメリットを最大限に活かした住み心地の良い暮らしの場所を選んでいただければ何よりです。