「リースバックやめとけ」という言葉を鵜呑みにして損をしている人もいらっしゃるようです。この言葉は、通常の不動産売却よりも高く売れないなどのデメリットを述べると同時に、不動産業者の都合で「通常売却で売らせたい」という意図も含まれていると思われます。
確かに、リースバックを利用した売却は通常の不動産売却よりも価格が低くなる傾向にありますので、「やめとけ」という意見は一般的な状況では間違っていません。ただし、いくつかのシチュエーションでは、リースバックが次善の策や最善の策となる場合もあるのです。
リースバックが次善の策となるケースとして、「高齢者の方が老人ホームの入居資金を確保するためにリースバックを利用した例」や、「資金繰りの厳しい経営者の方がリースバックを利用した例」も別の記事で紹介しています。
今回は、【マイホームだけは守らナイト】でも取り扱いが多い、「賃貸併用住宅を所有している方がリースバックを利用するメリット」を取り上げ、賃貸併用住宅の場合も「リースバックやめとけ」か?本当のところを探ってみたいと思います。
目次
1.賃貸併用住宅とは
賃貸併用住宅とは、所有者が一部を自身の住居とし、残りの部分を他人に賃貸する住宅のことです。
一般的には所有者が上層部分に住み、1階やその他の部分をテナントに貸し出しています。所有者はテナントから家賃収入を得ることができます。
2.賃貸併用住宅の売却方法
賃貸併用住宅の売却には3つの方法があります。
まず1つめは、所有者自身が住んでいる部分も含めて全てを空室にして売却する方法です。
2つめは、所有者だけが退去し、他の部分はそのままで売却する方法です。
3つめは、リースバックで売却し、その後、所有者が住んでいる部分だけ借り戻す方法です。
リースバックを利用すると、通常の不動産売却価格の70%程度になることが多いとされています。しかし、賃貸併用住宅でリースバックを利用した場合、通常売却と同程度の価格となるケースがあります。
3.賃貸併用住宅を空室にする場合の課題
賃貸併用住宅を空室にする場合、賃貸部分は入居者が頻繁に変わるため、その都度リフォーム工事や設備のアップデートが必要です。
一方、所有者が使用していた部分は長期間居住したため、内部設備などが劣化している可能性があります。
そのため、購入者が物件を引き受ける際には、大規模なリフォーム工事が必要となる場合があります。その分、リフォーム費用を見越し、通常より低い売却価格を設定する必要があります。
4.リースバック 賃貸併用住宅のメリット
4-1. リースバックで賃貸併用住宅を売却した場合
賃貸併用住宅をリースバックで売却する場合、一括で売却代金を受け取りながらも、引き続きそのまま住み続けることができます。
売却後は、賃借人として、同じ家に住むことになります。
また、賃貸併用住宅をリースバックで売却する場合、購入者にも以下のようなメリットが生じるため、結果としてリースバックで売却することが最善策となる場合もあります。
4-2. リースバックを利用した賃貸併用住宅の購入
1.費用面でのメリット
購入者側にとって、元オーナーがそのまま住み続けるため、その部分をリフォームする必要がありません。
また、賃貸マンションなどの収益不動産を購入する際の主な目的は、安定収益を得ることですので、元オーナーがリースバックで住み続けることは、新所有者となる投資家にとって好ましい状況と言えます。
2.借入時のメリット
購入者が借入をする際、金融機関にとっても融資しやすい条件となります。
例えば、満室状態の賃貸併用住宅を購入するとしましょう。
●通常売却の賃貸併用住宅を購入した場合
賃貸部分が満室状態であっても、元所有者が使用していた部屋は空室となります。
購入者は、空室1室ある投資物件を購入したことになります。
●リースバック契約を結び、賃貸併用住宅を購入した場合
賃貸部分が満室の状態に加え、元所有者は、使用していた部屋にそのまま賃貸で住み続けます。
5. 賃貸併用住宅の場合も「リースバックやめとけ」か?
賃貸併用住宅の場合も「リースバックやめとけ」は、間違った判断のようです。むしろ、賃貸併用住宅の売却では、リースバックが最善の策となることが多いのです。
通常の空渡し売却が100%とすると、リースバックでの売却は100%~105%程度の価格設定となります(オーナー住居部分のリフォーム費用によります)。
6. まとめ
賃貸併用住宅の売却においては、リースバックは適切な選択肢となります。一般的な空渡し売却と比較しても、リースバックでの売却は価格的な差異が少なく、購入者にもメリットがあります。
ただし、賃貸併用住宅の売却に際しては、リフォームや設備の劣化に注意しながら適切な価格を設定することが重要です。