【リースバックで老後資金の準備】をするということは、もし老人ホームの入居が必要となった時、すでに入居費用の準備もできている上、入居する直前まで、売却した自宅にそのまま住み続けることができるということです。ただし、認知症になる前に手続きをしなければなりません。なぜなら認知症と判断されてしまうと、本人の意思だけでは、自宅の売却自体ができなくなってしまうからです。
不動産のリースバックは、ここ最近、特に高齢者の方のニーズが高いと感じます。よくあるケースは、両親のどちらかが亡くなり、1人取り残された親の住まいをどうするか、という局面で検討される事があります。
子供世代は、親に対して、“認知症になる前に老人ホーム入居資金等の、【老後資金の準備】をしておいてほしい”という考えがあり、そのために「実家の売却を早めに進めてほしい」と思います。反対に親は、「死ぬまでこの家に住み続けたい」と願っています。
親子の相反する2つの想いの解決策として、実はリースバックが使いやすく安全な方法なのです。今回は【老後資金の準備】をするタイミングを逃さないために、認知症と不動産売却についてご説明いたします。
1.認知症でも家は売れるの?
認知症になると、不動産の売却ができなくなるという事をご存知でしょうか。
以前、「マイホームだけは守らナイト」で行ったアンケート調査では、「認知症などで“意思能力”がなくなった場合、家を売却できなくなることをご存じですか?」と質問したところ、7割の方が『知らない(70.4%)』と回答しました。(モニター提供元:ゼネラルリサーチ)
では、預金も少なく、老人ホーム入居資金が無くて困っているのに、“自宅を売却したくても売却できない。”このような場合はどうなってしまうのでしょうか?
2.成年後見人が付くと不動産の売買が出来ない?!
認知症は、一般的には高齢になると発症してしまうことが多いですが、脳の病気や障害など、様々な原因によって物事を判断する能力が低下し、日常生活全般に支障が出てくる状態です。
そのため、その人の権利や財産を法律的に守るため成年後見人が付くことがあります。まずは、成年後見人について、触れておきます。
◎成年後見人とは
成年後見人とは、家庭裁判所から選任され、認知症や知的障害、精神障害などが原因で物事を判断する能力が不十分になった人の権利を法律的に守る人のことをいいます。
成年後見人は、本人の財産を家庭裁判所の監督のもと、管理することになります。たとえば、不動産の売却、金融機関との取引、福祉施設等との契約などの必要があっても、本人の判断能力が不十分であればこれらの行為を行うことができません。なぜなら、判断能力が不十分であれば本人に不利益が生じる可能性があるからです。このような場合、成年後見人が本人に代わり手続きを行うことになります。
また、日用品の購入等を除き、本人が単独で行った法律行為(契約など)は、成年後見人が取り消すことができます。つまり、本人は自由に財産を処分できなくなりますし、もちろん親族は勝手に処分出来ません。
世間で言われるのは、“実家を売却して、親の介護費用を捻出したくても、成年後見人を付けたら実家は売ることができなくなる”とか、“家を売る必要に迫られているのに、成年後見人が付いたから売らせてもらえない”といった話です。
上記の"◎成年後見とは"で記載した通り、本来なら認知症になってしまった方の不動産売却も、成年後見人を経由することで可能なはずなのに実際には売ることができない、つまり法的には認められてはいるものの、実際には違うみたいだ、ということです。
事実は、どうなのでしょうか?
成年後見人関与の不動産売買は可能です。但し、成年後見人になる弁護士や、司法書士の見解、家庭裁判所の判断に左右されます。特に、選任された弁護士や司法書士が成年後見制度のもとで、不動産売却を行うことに慣れているか、柔軟な思想を持って着手してくれるか、という部分にかかってきます。
やり方を間違えたり、成年後見人の選択を間違えたり、成年後見人を選ぶ際のデメリットを理解していない場合は、問題やトラブルが起きてしまいます。
3.成年後見人を付ける際の注意点
成年後見人は一旦付けてしまうと、原則として解約ができません。ですから後悔の無いように、以下の注意点を理解しておくことが必要です。
注意点1.(費用について)
成年後見人を付ける際の注意点として、まずは費用についてです。成年後見人への支払いが月当たりで大体3万円~5万円かかります。金額は、家庭裁判所が決定し、1年分まとめての支払うことになります。
もし、成年後見人の力を借りて行う法的契約が、不動産の売買だけだとしても、「安くしてくれ」という事は通用しません。そして、この支払いは、途中で解約ができないため、本人が亡くなるまで続くという事です。
注意点2.(誰が選任されるか)
成年後見人の専任の際には、3つのケースがあります。
成年後見人を依頼したい弁護士や司法書士などの専門家がいる場合と、いない場合、専門家では無い親族がなる場合です。
A.成年後見人を依頼したい専門家がいる場合
成年後見人を依頼したい弁護士や司法書士がいる場合、家庭裁判所に申し立てをします。その専門家に何か問題が無ければ、その専門家が選任されることが殆どです。
B.成年後見人を依頼したい専門家がいない場合
注意をしなければならないのは、成年後見人の候補がいない場合です。この場合、家庭裁判所は、成年後見人の候補者のリストの中から、任意で選出します。
選出の基準は、候補者の事務所の所在地と被成年後見人(本人)の住所が近い点などで考慮されます。要注意事項として、どのような弁護士や司法書士が成年後見人になるかが全く分からないという点です。
もし、この成年後見人が不動産の売買に疎い人であったなら、実家や自宅の売却に対して同意しない可能性もあります。
また仮に同意した場合でももし、不動産売買に不慣れな弁護士等であったなら、結果的に被成年後見人(本人)にとって不利な形での売却となってしまう可能性もあります。
C.専門家ではない親族がなる場合
以前は親族が後見人になるとその後トラブルになるケースが多いため、避けられていましたが、現在では少しずつ増加しております。
親族が成年後見人になる場合、A.成年後見人を依頼したい専門家がいる場合と同様に家庭裁判所に申し立てをします。
家庭裁判所は、殆どの場合、成年後見人となる親族に「後見監督人」をつけます。
この後見監督人は弁護士資格者等になります。後見監督人に対しては月当たり2万円近くの費用が掛かります。後見監督人は手間の掛かる成年後見業務をしない分、依頼する費用は抑えられます。
成年後見人、成年後見監督人報酬額等
https://niben.jp/service/soudan/kojin/management/column/entry/post_32.html
注意点3.(成年後見人への支払いと不動産売却の収益について)
自宅にかなりの価値があり、成年後見人への支払いを考えても尚、自宅を売却した方が良いという場合には、成年後見人を通して、不動産売却を進める事も悪い選択ではありません。数字の比較をしてみましょう。
たとえば、成年後見人への支払いが月額3万円だとすると1年で36万円、認知症となった本人が、10年間生きた場合、トータルで360万円を支払う事になります。
一方、価値のあるエリアの不動産の場合、土地の売却金額が、5000万円とか、1億円という金額が付くこともあります。そうなると不動産売却で得た資金で、快適な介護を受ける事もできますし、より上質な老人ホームに入居する事もできるでしょう。
これなら、10年間支払うであろう360万円のコストを考慮しても、成年後見人を依頼するのも良い選択ではないでしょうか。 ただ、実際のところ年齢や病状によっては、10年という期間よりも、短い期間なのかもしれません。
まとめ
今回は、認知症になってしまった場合の不動産の売却に焦点を当て、説明してきました。
成年後見制度は、利用するにあたり金銭的にも時間的にも負担が大きいことが特徴です。やはり、認知症が悪化する前に手を打つのが最善かと思います。
リースバックで自宅を売却することは、老人ホームへの入居や介護にかかる費用など、老後資金を準備するための選択肢の1つです。リースバックは柔軟で使いやすい方法ですが、認知症になってしまうと不動産の売却自体ができません。
リースバックに限らず他の手法も含めて、全体的にどの様に進められるかお早目の検討をお勧めします。